Apple社は、2020年9月16日（日本時間で9月17日）に、iOS14をリリースしました。
iOS14では、ITP機能という個人情報保護のためのサイトトラッキング抑止機能の影響で、広告の配信に影響が出てしまう仕様になってしまいました。
これによりアンチトラッキング対策が実現してしまい、広告運用において非常に大きな影響を与えることがわかっています。
端末の広告識別子であるIDFAの利用にユーザーの許可を必要とするプライバシー保護機能も強化されており、ユーザーのプライバシーが守られるようになったことによって、ターゲティングなどに利用できるオーディエンスデータの取得が難しくなってしまうんです。
では、そんな強化されたiOS14で、LINE広告を運用していくためにはどうしたらいいのでしょうか？
そこで今回は、iOS14におけるLINE広告の正しい運用方法について見ていきます。
iOS14で重要となるITPとは？
iOS14がアップデートされることで広告運用者に影響が出ると言われているITPですが、そもそもITPとは何なのでしょうか。
ITPとは、「Intelligent Tracking Prevention」のことで、Appleユーザーのプライバシーを保護するための機能のことです。
AppleのブラウザであるSafariに実装されている、プライバシー保護を目的として、ユーザーの行動を追跡したり分析したりするトラッキング機能を制限する機能のことを言います。
もともと、2017年9月にSafariに搭載されて以降、Cookie（クッキー）の利用などに役立てられてきました。
ITPは、iOS11の頃から搭載されている機能で、広告目的でCookie（クッキー）の使用が制限されるので、リマーケティングなどに影響が出ます。
しかし、iOS14になってからは全てデフォルトで廃止されることになります。
ITPは年々厳格化されており、iOS14になるまでも何回もアップデートが実施されています。
ITPが搭載されているのは、Safariだけでも全体の61.26%とかなり多いので、ITPがもたらす広告への影響はかなり大きいと考えられます。
iOS14にアップデートされることで何が起こる？
OSがiOS14にアップデートされることによって、全てのブラウザでITPがデフォルトで有効化されるようになります。
これは、iphoneなどで搭載されているsafariなどのブラウザだけでなく、iOS版のGoogle ChromeやMozilla Firefox、Operaなども対象になるということです。
さらに、アプリ内でブラウジング機能を搭載しているものでも、ITP機能は有効になってしまいます。
これによって、Javascriptを利用して発行されているCookieの保持期間が7日間と限定されるようになりました。
Yahoo!広告やGoogle広告など、多くのウェブ広告の媒体がCookie（クッキー）やIDFAなどのオンライン識別子によるトラッキング機能を広告配信のターゲティングに使用しています。
iOS14の新しいガイドラインによると、アプリでユーザーのIDFAと呼ばれる広告用のユーザー識別子を追跡する場合には、ユーザーによる許可を要求するとしています。
iOSを使用しているユーザーに対しては、ユーザーからトラッキングを有効にしてもらうように許可してもらわないと、デバイスの識別子の値を取得できないので、トラッキングが出来なくなってしまうということになります。
IDFAを活用してターゲティングしていた広告においては、広告の配信量がかなり減ってしまう、もしくは使えなくなってしまうという可能性があるということです。
取得できるデータの量が減るので、広告配信の計測や、ターゲティングの精度も低下してしまう恐れがあります。
iOS14にアップデートされることで起こる影響は？
では、実際にiOS14にアップデートされたことで起こってしまう影響についてご紹介します。
IDFA利用がデフォルトで不可能になる
IDFAというのは、Appleユーザーの端末にランダムで割り当てられている広告用識別子のことです。
これは、1つの端末につき、1つのIDが付与される形になります。
これにより、別のアプリ間でも、1つのユーザーとして認識されるようになっている仕組みになっています。
しかし、iOS14では、このIDFAが利用不可になってしまいます。
ターゲティングを利用して広告を配信している場合には、IDFAを使用していますが、iOS14ではユーザーの同意が必要になります。
リマーケティング広告を利用している企業なんかは大ダメージでしょう。
初期設定段階では、アプリごとに利用不許可の状態となっています。
ITPにバウンストラッキング対策が搭載される
ITPというのは、サイトトラッキング防止機能のことで、サイトを横断した時にCookie（クッキー）を判別できなくする機能であるということは説明してきました。
さらに、ここにバウンストラッキングという機能も追加されるようになります。
バウンストラッキング対策というのは、サイト内のリンクをクリックした際にリダイレクトをさせることで計測しようとしていたデータが無効化されてしまうことです。
つまり、サーバーにCookie（クッキー）が送信されず、データの分析や蓄積が全くできなくなってしまうということです。
アプリ内WebにもITPが適用される
今までは、ブラウザに限定して話を進めてきました。
しかし、アプリ内ウェブも例外ではありません。
アプリ内WebViewというのは、アプリの中でウェブサイトを表示する機能のことですが、Safari以外のアプリでウェブサイトを表示しているのは、ほとんどWebViewなんです。
今まで、ITPというのはSafariアプリにだけ適用されていたものですが、これからはGoogle chromeや、Yahoo！などのサイトを閲覧している時にもITPが適用されるようになります。
iOS14のアップデートで広告業界にどんな影響がある？
では、iOS14にアップデートされることで、広告業界にはどんな影響があるのでしょうか。
リターゲティング広告配信が減少する
iOS14にアップデートされることで、バウンストラッキング対策が施されるようになります。
バウンストラッキング対策が施されることで、今まで追跡ができていたユーザーの行動が全く追跡できなくなってしまいます。
設定したターゲティングに該当するユーザーが識別できなくなってしまうので、広告配信量も激減しますし、配信機会も減っていくでしょう。
リターゲティング広告の実用性が皆無になってしまうと言っても過言ではありません。
これからは、リターゲティング広告はどんどん減少していく傾向にあるでしょう。
ターゲティング広告の精度が減少する
Androidには影響はありませんが、Appleユーザーに対するターゲティング広告の精度は大幅に減少してしまうでしょう。
ユーザー情報や行動履歴などを見ることができなくなってしまうので、今後の予測を立てることができません。
コンバージョンが減少する
一概に全ての広告業界に当てはまる話ではありませんが、ITPの影響でCookie（クッキー）を利用したコンバージョンの計測が、iOSでは出来なくなってしまいます。
さらに、計測可能期間も短縮されてしまうので、例え計測ができたとしても、時間が限られてしまいます。
広告がクリックされてから、日にちを置いて再度Webサイトに訪問してくれても、そのユーザーのコンバージョンが記録されないことになるので非常に厄介になります。
iOS14のアップデートによる影響を受ける広告プラットフォームは？
iOS14のアップデートによる影響を受ける広告のプラットフォームはたくさんあります。
- Google広告
- Yahoo!広告
- Facebook広告
- Twitter広告
- LINE広告
など、広告クリック情報をJavaScriptで生成したファーストパーティCookieに保持して計測する広告プラットフォームのすべてが影響を受けることになります。
これによって、コンバージョンの計測やオーディエンスリストでの保持期間が最大24時間に短縮されてしまいます。
影響を受けやすいのは、リターゲティング広告の配信をしている広告アカウントや、検討期間の長いBtoB商材などになります。
Google広告
Google広告では、アプリキャンペーンにおいて大きな影響が出ます。
iOSアプリのコンバージョントラッキングは、基本的にIDFAを利用して計測を行っているので、コンバージョンやイベントデータに欠損が発生する恐れがあります。
アプリに広告を表示されるために、AdMobやGoogle アドマネージャーを利用していますが、広告リクエストにIDFAを搭載しているので、アプリの広告面に対するターゲティング精度が低くなります。
Yahoo!広告
Yahoo！広告では、アプリダウンロード用広告とアプリ訴求キャンペーンに大きな影響を及ぼします。
iOSアプリのコンバージョントラッキングには、第三者によるアプリ計測プロバイダが必要になります。
これも、IDFAを利用して計測していますので、コンバージョンデータに欠損が発生することになります。
アプリの広告面に対してターゲティング精度が低くなるので、インプレッション数が激減する可能性があります。
Facebook広告
Facebook広告では、モバイルアプリインストール広告や、モバイルアプリエンゲージメント広告に影響を及ぼします。
また、カスタムオーディエンスでIDFAを利用したオーディエンスの場合、広告配信先になる端末のIDFAの取得が出来なくなってしまうので、インプレッション数が激減してしまう恐れがあります。
オーディエンスネットワークへの配信についても、IDFAが利用されている場合があるのでアプリの広告面に対するターゲティング精度が低くなってしまう恐れがあります。
Twitter広告
Twitter広告では、アプリのインストール数キャンペーンや、アプリのエンゲージメント数キャンペーンに影響を及ぼします。
また、カスタムオーディエンスでモバイル広告IDを利用しているオーディエンスにおいても、広告配信先となる端末のIDFAが取得できなくなるので、インプレッション数が激減してしまう恐れがあります。
LINE広告
LINE広告では、アプリのインストールやアプリのエンゲージメントに影響を及ぼします。
アプリのインストールなどの効果測定をするためには、LINE広告を連携している効果計測SDKが必要になりますが、ここでもIDFAを利用している場合には影響を受けてしまいます。
広告配信先の端末のIDFAが取得できなくなってしまうので、インプレッション数が激減してしまう恐れがあります。
iOS14のアップデートによるIDFA利用をユーザーに許可してもらうには？
IDFAの利用をユーザーに許可してもらう機能が実装されましたが、デフォルトでIDFAの取得は出来ないようになっています。
IDFAを取得するためには、アプリ上でユーザーにトラッキングしてもいいかどうか承諾を得なければならなくなります。
アプリ内で、ユーザーが許可するかしないかを選択する画面が表示されます。
ユーザーに、許可してもらうことでアプリ内での行動を取得したり、エンゲージメントを計測したりできるようになります。
アプリ内で得た情報については、個人情報を含まないように匿名化されてIDFAに紐づけされるようになります。
IDFAには、年齢や性別、興味関心などのユーザー属性も含まれているので、類似ユーザーのターゲティングも活用できるようになります。
ユーザーに許可をしてもらわなければ、これらのターゲティングも行えなくなってしまうということです。
LINEにおいては、表示される同意画面で「許可」をタップしてもらう必要があります。
「許可」をタップすることで、LINEアプリで表示される広告でよりユーザーの興味関心に合ったものが配信されるようになります。
例えば、「Appにトラッキングしないように要求」をタップしても、ユーザーは通常通りLINEを利用することは可能です。
また、一度「許可」をしたけれど、後からトラッキングを取り消したい場合には、次の手順で設定を行うことも可能です。
設定→プライバシー→トラッキング→アプリ一覧からLINEアプリをオフにする
これで設定は完了です。
iOS14のアップデートに左右されない広告配信の方法は？
では、iOS14のアップデートに全く左右されない広告配信の方法はあるのでしょうか？
その方法について見ていきましょう。
iOS14によるアップデートにおいて、リターゲティング広告の配信が制限されてしまうことで、リターゲティングに頼らないターゲティング方法が注目されています。
デモグラフィックターゲティング
デモグラフィックターゲティングというのは、特定の、限定された年齢層や性別、ターゲット顧客の属性などを利用して行うターゲティングの方法です。
この方法であれば、iOS14による影響を全く受けることなく、コンバージョンの計測をすることができます。
Facebook広告やInstagramでは、現状でもデモグラフィックターゲティングをかなり活用しています。
地域ターゲティング
地域ターゲティングでは、国や特定の場所、地点を中心とする一定の範囲内にいるユーザーへ広告配信をすることができます。
地域ターゲティングでは、それぞれの地域で興味関心の対象となる場所あ店舗の所在地を指定するなど、ユーザー属性と併用することも可能になるので、ユーザーへダイレクトに配信することができるようになっています。
サイトへ訪れてもらう必要がないので、iOS14の影響を受けません。
プレースメントターゲティング
プレースメントターゲティングというのは、広告を配信する、または対象外のウェブサイトの指定を行うことで、広告配信先を制限することができる手法です。
コンバージョンの計測などには使われることがないので、iOS14とは全く無関係のターゲティングになります。
オーディエンスカテゴリーターゲティング
オーディエンスカテゴリーターゲティングというのは、特定のカテゴリーに対して興味関心のあるユーザーや、特定の属性を持っているユーザー、ライフイベントを迎えるユーザー層に対して広告を配信する機能です。
サーチターゲティング
これは、Yahoo!広告で有効な機能です。
サーチターゲティングというのは、ユーザーが過去に検索したキーワードをもとに、指定のキーワードで検索した人だけに広告を配信することが出来るディスプレイ広告のターゲティングのことです。
検索広告と違って、画像を利用して視覚的な訴求をすることが出来ます。
キーワード単位で細かいターゲティングが出来たり、指定したキーワードの検索条件まで絞った配信も可能になります。
広告誘導先のURL入力をすることで、おすすめのキーワードを自動で提案してくれます。
Yahoo!ニュースやYahoo!知恵袋などのコンテンツページに掲載されます。
類似ターゲティング
類似ターゲティングというのは、自社のサイトを訪問したユーザーと、類似しているユーザーに広告を配信する方法のことです。
新規ユーザーへアプローチをしたい場合などに効果的なターゲティング方法です。
ユーザーの電話番号や、メールアドレスなどのデータを利用するので取り扱いに注意が必要ですが、しっかり取り扱えば新規顧客になりそうな人に対して広告を配信することが出来ます。
Google広告では、次のような条件を満たしていると利用することが出来ます。
- ポリシーを遵守した実績がある
- 支払いに関して問題が発生していない
- 90日以上Google広告の利用実績がある
- 利用金額が全期間で5万米ドルを超えている
iOS14のアップデートでLINE広告に向いている広告配信の方法は？
iOS14のアップデートに左右されないターゲティング方法について見ていきましたが、LINE広告に向いている配信方法は次の通りです。
- デモグラフィックターゲティング
- LINE公式アカウントの友達類似ターゲティング
- 顧客リストの類似ターゲティング
もし、ユーザーにトラッキングを許可されなかった場合にはこれらのターゲティング方法についても活用していきましょう。
iOS14のアップデートでLINE広告が注目される理由は？
iOS14のアップデートによって、広告配信がなかなか難しくなっていく中で、LINE広告というのは注目される広告プラットフォームになります。
その理由について見ていきましょう。
エンゲージメントの向上に便利
LINEというのは、LINE公式アカウントがあります。
LINE公式アカウントでは、コミュニティ別のグループを簡単に作ることが出来ます。
LINE公式アカウントに友達として登録すると、全体でも個別でも、情報を提供することが出来るようになります。
また、クーポンを配布したり、ポイントカードを作成したりなど、色々な施策を簡単な設定で出来るようになっています。
LINE公式アカウントに友達登録してくれているということは、企業やブランドに興味があると言えますよね。
エンゲージメントが高まることで、情報を提供してもいい、むしろ提供してお得な情報が欲しいと思うユーザーが増えてくるはずです。
データ取得がしやすい
LINEの公式アカウントには「リサーチ機能」が搭載されています。
アンケート形式でユーザーの興味関心について知ることが出来るのです。
LINEのメッセージでアンケート結果に基づいたメッセージを送信することも出来るので、エンゲージメントも強化することが出来ます。
顧客としっかり関係性を深めていくことは重要になりますので、しっかりとリサーチ機能を活用していきましょう。
iOS14を利用したLINE広告の正しい運用方法は？アップデートの影響についても！まとめ
iOS14へのアップデートは、広告業界に大きな痛手を残すことになりました。
今まで、アプリなどからスマートフォンなどの個人情報を簡単に入手出来ていたのに、ユーザーの同意が必要になってしまうということになってしまうと、広告を配信するための情報が得られなくなってしまいます。
「プライバシー保護の強化」というのは、世界中で加速しています。
これからは、Cookie（クッキー）やIPアドレスなどの個人情報については第三者に提供することがどんどんできなくなっていくはずです。
しかし、iOS14にアップデートされることが決まっている状態なので次の行動を起こさなければなりません。
iOS14に無関係な広告配信方法もあるので、是非参考にしてみてください！
LINE広告というのは、LINE公式アカウントを活用することによってユーザーと直接繋がることが出来る機会を作ってくれます。
外部のデータに頼らない戦略を練っていきましょう！
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